国際水産養殖技術展2023への出展

大阪公立大学養殖場高度化推進研究センター事務局 増田 憲和

 

図5 会場(CAINESブース)の様子

 大阪公立大学養殖場高度化推進研究センター(Center for Aquaculture Initiatives)は3年を1期として活動しており、2023年は5年目(第2期2年目)の年となりました。
 CAINESの主な活動として、第1期の2019年度から2021年度までは年4回のセミナーと現場見学会を開催してきました。そして、2022年度からの第2期の新たな取り組みとして、会員機関共同による展示会への出展を開始し、前年に引き続いて2023年も国際水産養殖技術展に出展しました。

1. 出展の目的

 国際水産養殖技術展は、インターナショナルシーフードショーとの合同開催で規模も大きく、水産関係者のみならず幅広い分野の関係者が国内外から来場するため、PR効果が大きいことが過去の実績からも明らかになっています。
 CAINESの出展では、各機関のシーズとニーズを出展することで、その活動を広くPRすることにより市場の開拓と販路拡大を図るとともに、新たな協業パートナーとの出会いや新メンバーを発掘することを目的としています。

2. 出展内容

 2023年の出展では、CAINESを含め5団体での共同出展となりました。以下に、出展者とその出展内容について紹介いたします。

2.1 石川県水産総合センター

「能登とり貝の養殖」

図1 能登とり貝図

 石川県水産総合センターでは、能登半島七尾湾で養殖されている垂下式のトリガイ養殖と、養殖海域の水質をリアルタイムに把握・配信し、『能登とり貝』の安定的な生産を支援する観測システムについて紹介する場をいただきました。『能登とり貝』は市場から高い評価を頂いていますが、養殖海域の環境は季節に応じて大きく変化するため、育成水深のきめ細かい調節が必要です。環境データを活用して、高品質な『能登とり貝』の生産を支援していきます(図1)。

2.2 広島県立総合技術研究所、

「VR/AR技術」、「PEかき筏とトレー式養殖」
 広島県立総合技術研究所では、VR/AR技術の水産・養殖業への利用についてと、PEパイプ製かき養殖筏(PE筏)とトレー式養殖について出展させていただきました。VRでは、牡蠣養殖筏の上空からドローンで空撮した全方向動画を視聴する体験を提供。多くの方にVRの利用について考えていただく機会を得ることができました(図2)。PE筏とトレー式養殖については、生産者の方の他に多くの支援機関や行政の方に興味を持っていただき、その後の普及活動に繋がっています。

図2 VR体験

2.3 大阪公立大学「ロボット漁船の開発」

図3 ロボット漁船の1/7実験モデル

 大阪公立大学ではロボット漁船を2021年度から研究開発してきました。有給餌養殖業における大きな課題の一つに漁業労働者の労働負荷というものが挙げられます。自動給餌機は餌やりの労働軽減に一定の役割を果たしますが、30~40個程の生け簀を保有する養殖事業者が1つの給餌機約300kg~400kg程度の補給を週に3、4 回程度行ってます。つまり毎回9 ~12tonの補給を人力で行っています。この課題を解決するためにロボット漁船を研究開発してきましたのでロボット漁船の1/7モデルを展示しました(図3)。

2.4 日本海工株式会社「ロボセン」

図4 ロボセン

 2016年から大阪府立大学(現:大阪公立大学)と共同研究を始めた「ロボセン」ですが、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業:経済産業省:2020~2022年度)での付帯装備の高度化を経て、養殖場周辺海域での水質環境調査を行っています。また、ロボセン技術の多角的な活用として、ダム湖でのトライアル調査や港湾工事における濁度調査にも取り組んでいます(図4)。

3. 出展結果

 2023年の出展者数は600社(前回570社)、出展ブース数で1,267小間(前回930小間)、来場者数は3日間で23,394名(前回18,820名)となり、出展者、来場者ともに大幅に増加しました。2022年の開催でも会場内は大変盛況の雰囲気でしたが、2023年は海外からの来場者も相当多く見られ、前回にも増して盛況な展示会となりました(表1)。
 CAINESブースにおいても多くの方々にご来訪いただき、CAINESの活動と共同出展機関それぞれのシーズ事例を紹介することができました(図5)。
 しかしながら、来場者アンケートの結果では、「印象的だった出展者:機械・技術分野」において73位(前回15位)と非常に残念な結果となり、事務局として今後の展示方法やアピールの仕方などについて課題が見つかりました。
 2024年も引き続いて出展を予定しておりますので、CAINESの皆さまの取り組みを積極的にアピールすることで多くの協業が創発されることを期待しています。

図6 国際水産養殖技術展2日目に開催したCAINES意見交換会