商社としての水産業への関わり方

阪和興業株式会社 鈴木 佳奈

1. なぜcainesに入会したのか?

 弊社は商社という立ち位置で、多岐に渡る商材のトレーディングを行っております。売上の半分が鉄鋼事業と食品からは遠いような会社かと捉えられがちですが、実は食品事業もこじっかりやっております。その商材のほとんどがcainesとも共通項になる「水産」品になります。海外に複数の拠点を持ち、原料の調達、海外加工、製品供給、新商材の発掘迄世界をフィールドに日々商売をしております。
 そんな私たちは日々、日本市場の縮小および海外の水産需要の増加という【需要地の変化】、そして海面温度の上昇、乱獲、餌代の高騰など【水産資源の永続的な確保】を課題だと感じています。海面養殖や陸上養殖など、「捕るから育てるへ」という観点で水産業の川上へどのように関わっていくのか、一歩でも水産の上流部分へ足を踏み入れたいという思いから、協業できる仲間を見つけることを目的とし入会しました。

2. 私たちの仕事

 商社というとどんな仕事をしているのか想像がつかないとよく言われるので、事例をもとに紹介させていただきます。
▼えび
 えびには「養殖」と「天然」の2種類があります。養殖のえびは年中安定供給が可能という事で幅広い業態で使用されており、回転寿司などの外食レストランやスーパーなど、えびを見ない日はないと思います。
 そんな海老は東南アジア中心に養殖されています。マングローブと呼ばれる自然な場所で伸び伸びと育てられる「粗放養殖」、人工的に作った池で適切な管理をされて育てられる「集約養殖」、最近では陸の上に小さなプールのようなものを作り水質/餌の管理を自動化したような養殖方法まで出てきております。
 3~4か月養殖し適切な大きさになって水揚げされると、加工場へ運ばれ、殻を剥いたり、ボイルしたり粉を付けてエビフライにしたり、顧客のニーズに応じた加工がされ、凍結、梱包の過程を経て、コンテナに詰められた商品たちが海を渡り日本に運ばれます。

 次に天然のえびです。回転寿司で「赤えび」と呼ばれるもの、あのエビは日本の真逆のアルゼンチンで漁獲されています。アルゼンチンピンク海老ということで「アルピン」「アルチン」などと業界では呼ばれています。

 こちらの海老、そのまま日本に運ばれる場合もありますが、回転寿司用の海老は日本で加工すると加工賃が高いこともあり、大抵は第三国である東南アジアの工場に運ばれます。人海戦術で工員さんが殻を剥き、身を開き、寿司ネタの上にそのままのせるだけでよい状態まで加工し、鮮度が失われないように凍結し、海を渡って日本に運ばれます。スーパーや外食チェーンに販売され皆さんの食シーンにお目見えするというような流れです。

▼天然の水産品
 天然の魚やカニなどは漁獲できるシーズンが各国決まっており、シーズンになると、各営業マンが海外現地漁場や工場に赴きます。毎日水揚げされる魚を検品し、買付するロットを決め価格交渉をしていきます。サイズを確認したり、魚を捌いて鮮度を確認したり魚種によって見るべきポイントが違ってきます。水揚げが続くと纏まって寝ることができない日々が続く過酷な状況もあるので、「現場力」と言われる能力を若手のうちからつけることができるのもある意味醍醐味かもしれません。この現場力こそ弊社の強みでもあります。
 昨今では日米欧州市場だけでなく、中国アジア、アフリカ市場など水産品の需要の高まりがみられるので、商社のネットワークを最大限活用し一番良いタイミングでの原料買付を行い、お客様への販売活動を行っています。
 このように原料の買付、生産管理、輸出入、在庫管理、販売など一気通貫で商売をしているのが私たちの仕事です。直接我々の名前が出ることはありませんが、皆さんが良く知っている外食チェーンやスーパーの商材の裏側を支えています。

3. 今後の課題、展望

 私たちの仕事は日本国内にいる人々のおなかを満たす仕事、と言えると思いますが、今後強化していかなければならないことは海外にいる人々のおなかを満たす仕事つまり「日本の商品を海外に出す仕事」だと思っています。
 日本政府も水産品含む日本品の輸出強化を謳っています。日本の人口減は水産業界にいる皆さんの商売に少なからず影響を与えており、海外に活路を見出すことが必須となっています。
 私たちは、グループ会社で製造したいくらや養殖魚のフィーレなどの海外輸出はあるものの、売上の構成比からするとまだまだ少ない商売形態です。海外の魚の卸に特化してきたため、日本の水産品についてはまだまだ勉強が必要です。
 輸出をしていく中で、ただ商品の売買をするだけではなく、生産物に責任をもって売買していきたいと考えるようになりました。海外の顧客と商売をしていると「何故君たちがこれを売るのか?」シンプルですが深い質問を受けることがあります。責任を持つとはつまり、水産物を作るところの川上から一緒に商品を作り込む、という事だと思っています。
 生産のノウハウは我々持ち合わせてなくても、それらを海外の顧客に販売するノウハウはあります。日本では売れないような魚種、サイズの魚が海外では欲しいサイズかもしれません。餌もコストカットや機能性向上できる可能性があるかもしれません。養殖設備や素材、効率化できるかもしれません。
 まだまだ日本の水産業は世界で戦えると思っています。武器はあるけど戦い方を知らない可能性もあると思います。
 魚を生産している方、養殖の研究をされている方、養殖設備を製造している方、自治体や大学の方々、立場や業界は違いますがcainesメンバー含め「水産」で繋がる全ての皆さんと一緒に日本の水産業を盛り上げていきたいと考えています。