世界初ホタテ貝自動殻剥き機オートシェラー
~労働力減少時代における水産加工業の自動化への挑戦~

株式会社ニッコー 佐藤 一雄

1. ニッコーについて

 1977年、北海道釧路市に創業した弊社は、食品・農産・畜産・水産分野における省人・省力化機械の開発・製造・販売を手がける専門メーカーです。設計から製造、組立、アフターサービスまでを自社内で一貫して行う垂直統合型の体制により、オーダーメイド型の対応力を強みに、顧客の多様な課題解決に貢献してまいりました。
 なかでも、水産物をはじめとした不定形物の加工に特化した技術力を活かし、メカニクス、電気制御、画像認識、ロボット制御、AI・IoTといった先端技術を融合させながら、現場ニーズに即した機械開発を推進しています。

2. 水産加工の人手不足とホタテ加工現場の現状

 現在、北海道における水産加工業は、著しい労働力の減少に直面しています。2000年前後には数万人規模であった従事者は、2023年には約2万人強まで減少。工場数もこの10年で約4割減(994→609工場)と急激に縮小しており※1、とりわけホタテの主要産地であるオホーツク地域では、2045年までに約40%の人口減少が予測されています※2。こうした状況は、地域産業の維持・発展に深刻な影響を及ぼしつつあります。
 ホタテ加工の現場では、貝柱を殻から取り出す作業に多くの人手と熟練技能が求められており、特に長時間立ち作業による身体的負担や高齢化が課題となっています。また、外国人技能実習生による労働力補填も制度的制限や応募者減少により限界があり、今後の持続可能な生産体制の確立が急務となっています。

3. ホタテ自動生剥き機「オートシェラー」開発

 こうした背景から、弊社では1996年、世界初の自動生剥き機「オートシェラー」を開発(図1)。微温の蒸気で貝柱と殻の接着を弱め、物理的な切断を用いずに高品質な貝柱を抽出する画期的な技術により、従来の手作業に代わる新たな選択肢として注目されました。 しかし当時はまだ人手の確保が容易で、吸水率の高い貝柱を重視する輸出先の基準とも合致しなかったため、普及には至りませんでした。 ところが2014年以降、輸出需要の拡大と人手不足の深刻化により、再び業界からの関心が高まりました。

図1 開発されたオートシェラー

4. 改良型「オートシェラー」とその効果

 そこで弊社は2 0 年ぶりに改良開発をスタート。(図2)
 新機構では、刃物による正確な貝柱切り出しを可能にし、欧米市場でも受け入れられる品質を実現。自動搬送、ブラシ洗浄、蒸気処理、ミミ・ウロ除去、特殊ナイフによる切断、貝柱回収までの一連の工程をシーケンス制御により自動化し、1時間で最大5,760枚の処理能力を達成しました。(図3)
 導入効果は極めて大きく、省人率82%、生産性は従来の5.5倍に向上。さらに歩留まり率は0.5%アップし、年間5,000トン処理の規模で25トン相当の増産、約6,000万円の増収効果が見込まれることが実証されました。

図2 最新型オートシェラー

図3 改良後のオートシェラー原貝処理工程

また、品質面においても、網走水産試験場の比較検査により、色、吸水率、ドリップ量、栄養成分、食味評価において、手剥きと機械剥きに違いがないことが明らかとなり、現場からの信頼性も獲得しました。蒸気による貝柱への影響も、人肌程度(38~40℃)でたんぱく質変性を起こさず、吸水率にも影響がないことが公的機関により確認されています。(図4)
 こうした取り組みの成果として、弊社の「ホタテ自動生剥きロボット オートシェラー」は「第8回ロボット大賞 中小企業長官賞」を受賞。長年の技術蓄積と現場密着型の開発姿勢が評価されました。

図4 網走水産試験場による各種検査

5. 社会変化に技術と品質で貢献

 さらに近年、中国のALPS処理水放出に伴う水産物輸入規制により、日本の水産業界は一時的な打撃を受けましたが、それにより輸出先の多角化や、国際社会への安全性説明、国内消費の活性化、サプライチェーンの見直しが進み、構造改革の契機にもなっています。弊社もまた、こうした社会変化を踏まえ、持続可能な水産加工業の実現に向け、技術と品質で地域・業界に貢献していく所存です。



[引用]
※1:農林水産省2023年漁業センサスの概要
(北海道・概数値)より引用
※2:国立社会保障・人口問題研究所
「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)から北海道局作成