農山漁村に活用できるIoT技術のご紹介

株式会社アイエスイー 高橋 完

1.獣害IoT事業

 農村農業が持続しにくい課題として鳥獣被害が上げられます。農林水産省の調べでは近年も150億円近い農作物被害があり深刻な問題となっています。その被害を軽減させるためには、個体群管理、侵入防止対策、生息環境管理の3対策が重要となります。その対策の中で当社は、個体群管理に必要な捕獲のスマート化を行っています。今回は2つのIoT機器とその活用方法をご紹介します。
 まず、「まるみえホカクン」です。この機器は、主に大型檻という約5m四方以上の檻の遠隔監視や遠隔捕獲ができる機器です。遠隔制御にはLTE回線を使用し、狩猟者はスマートフォンやパソコンにて、どこからでも檻の状態をカメラで監視や、ゲートを遠隔閉鎖することが可能です。これにより目的の獣を一番良いタイミングで捕獲することができ、また群れごと一網打尽に捕獲することも可能です。さらにカメラからの画像は、クラウドサーバーにアーカイブされるため、夜間行動することが多いイノシシやシカであっても、餌付け状態が把握でき、効率的な誘引が可能です。
 次に「ほかパト」を紹介します。檻や罠で捕獲する際は、罠猟の免許が必要ですが、免許を取得すれば最大30基まで檻や罠を仕掛けることが可能です。しかし多くの罠を仕掛ければ、捕獲されたかどうかを見廻る労力も増加し、たくさんの罠を仕掛けられないのが現状です。「ほかパト」は、罠で捕獲されたらセンサーが反応しLPWAによりデータを配信して、メールで狩猟者にお知らせする機器となっており、見廻り労力の軽減が可能です。特徴としてLPWA通信は150MHzの周波数を採用しており、山間部でも無線の回り込みにより遠方までデータ通信することが可能です。
 ここからはIoT機器の活用方法を紹介します。まず、IoT機器があれば簡単に捕獲できるものではありません。獣がいる場所を選定し、効率よく餌付け観察を行い、捕獲できる状態を作るという作業が重要で、それをすることで捕獲ができます。「まるみえホカクン」は、カメラによる遠隔監視が可能ですので、沢山いる場所を選ぶことも、効率的な餌付け観察も、目的の獣を捕獲も可能です。「ほかパト」は見回り労力の軽減ができる機器ですので、捕獲後に有効なIoT機器です。なので「ほかパト」を導入しても、獣がいない場所や非効率な餌付けをすれば、捕獲はできず、IoT機器は宝の持ち腐れとなってしまいます。
 当社では、この効率的な捕獲までの流れを、狩猟者にレクチャーすることで、IoT機器が最大限に活用されるスマート捕獲を実現しています。ちなみに当社のスタッフは、ほとんどが罠の免許を所持しており、三重県度会町にてイノシシやシカの捕獲も行うことで、捕獲技術の向上も行っています。(図1)

図1 まるみえホカクン、ほかパトの普及状況

2. 海洋IoT事業

 近年の気候変動の影響で海水温上昇や黒潮の大蛇行、赤潮などが発生し、水産養殖において、収量や品質が不安定になることが多くあります。それは今までの勘や経験則での漁業では中々上手くいかないことも原因の一つです。それを解決するために、漁業者や研究機関は、手動で海洋観測行い、データを活用しようとしますが、やはり手動の場合、労力がかかるため、多くても1日1回、少なければ数週間に1回の観測データしかなく、リアルタイムな変化を捉えることができません。
 これを解決するため、海上にIoT機器を設置し、水温や酸素量、塩分などのセンサーをその機器に取り付けることで、自動の定期観測ができる「うみログ」を開発しました。「うみログ」はソーラーバッテリーやカメラ、各センサーが本体に一体型となっており、養殖現場の過酷な環境下でも簡単に設置や動作が可能な機器となっています。さらにサーバーに配信されたデータは、Webアプリにより誰でも簡単に閲覧ができ、グラフ上で観測データの前年対比が行えたり、マップ上で広域な海洋の変化を捉えられたりと、漁業者が活用しやすいUIを持ち合わせています。さらに、自動昇降モデルも開発し、鉛直データを観測する仕組みも構築しました。
 次に、「うみログ」の活用事例を紹介します。北海道浜中町の散布漁協様では火散布沼という汽水湖にて、ウニの養殖が盛んに行われています。自然の昆布が沢山収穫できるため、それをウニが入ったカゴに入れて、美味しいウニを育てます。課題としては、汽水湖は雨季になると大雨が降り、雨水の流入により低塩分や水温の急激な変化など、ウニが斃死することが上げられます。それを解決するため、今までは現場で海水を舐めてチェックするなど、手動で観測を行っていましたが、リアルタイムな状況は把握できませんので、大量へい死が起こることも多くありました。元々、本コンソーシアムでは、散布漁協と様々な実証をされており、3年前に、当社の「うみログ」も導入してもらいました。令和6年の雨季は、8月末からの大雨で斃死を免れることはできませんでしたが、漁業者の中には、「うみログ」にて塩分が徐々に低下していることが把握でき、前日にカゴを沈めることで、斃死を免れた方もいるなど、少なからず成果は出ています。今年度も5月から「うみログ」は稼働しており、斃死対策に役立つことを期待しています。(図2)

図2 うみログ

3. 地域IoT事業

 全国の農山村にある「ため池」は、田畑への水の供給や、生物の住む場所など、重要な役割を果たしています。しかし、中には江戸時代から作られた池もあり、老朽化の問題や近年の異常気象の影響で線状降水帯の発生し、豪雨による池の決壊が問題視されています。そうならないために、ため池管理者は池の貯水量を小まめに確認し、貯水量が多ければ、池の水を排出するなどの管理を行っています。ため池は高台にあることが多いため、階段や坂を登らないと確認はできず、それだけでも重労働となります。また大雨時も池の様子を見に行く場合があり、かなりの危険も伴います。
 そこで、これらの労力軽減や危険防止のため、ため池の状態をどこからでも確認可能なIoT機器「いけログ」を開発しました。「いけログ」は、海洋IoT事業で説明した「うみログ」の技術をそのまま活用し、カメラの画像、水圧センサー、フロートセンサーにより水位情報を定期的にWebサーバーに配信します。平常時は数時間に1回データ配信を行い、豪雨時など危険な水位になると水圧センサー、フロートセンサーにてそれを判断し、危険モードに切り替わり、アラートメールや10分に1回の配信を行います。また、Webアプリには、気象庁の雨雲レーダーや、各自治体で提供されるハザードマップなどのGISデータをマップ表示可能です。「いけログ」は、ため池が多い瀬戸内地方を中心に全国に普及しています。(図3)

図3 いけログの仕組み

4. 林業IoT事業

 林業者の労働災害は、全産業に比べると10倍近い発生率となっています。林業会社は定期的な安全作業訓練などを行ってはいますが、森林内での作業は過酷で、倒木や滑落など危険と隣合わせです。さらに、林業現場は携帯圏外エリアが多く存在し、災害時にすぐにSOSを発信できず、圏内エリアまで移動してから連絡するなど、救助が遅れてしまうというのも重篤化の原因となります。
 そこで当社では、災害時に携帯圏外エリアでもタイムリーにSOS発信ができるIoT機器を開発しています。その技術は、獣害IoT事業で説明した「ほかパト」の150MHzのLPWA通信を使用した無線通知システムで「TasuCal(l たすかる)」というIoT機器になります。
 もし災害が起こった際、意識があれば、林業者が携帯する子機のSOSボタンを押して発信、意識がなければ、加速度センサーが数分の無反応を検知し自動発信します。また中継機には容態確認ボタンがあることから、軽度、重度などの容態を伝えることも可能です。
 TasuCallにより、林業労働災害の減少に少しでも貢献できればと思います。(図4)

図4 TasuCall

5. さいごに

 今後も、農山漁村の持続的な発展のため、現場に付き添ったIoT機器やサービスを展開できればと考えております。各地域のスマート化の取組は、YouTubeやSNSでも配信していますので、ぜひフォローお願いいたします。(図5)

図5 農山漁村の現場に付き添ったIoTサービス


■参考サイト
1)アイエスイー ホームページhttps://www.ise-hp.com/
2)アイエスイーYouTubehttps://www.youtube.com/@ise_mie
3) アイエスイーFacebookhttps://www.facebook.com/ise.jugai
4) うみログFacebookhttps://www.facebook.com/umilog.ise