1. はじめに
令和7年度の7月より、CAINESは大阪府から委託を受け、「養殖ビジネスマッチングプラットフォーム構築事業」を実施してきました。この事業はどのようなものかを説明し、今年度の取組内容をご紹介したいと思います。また、この取組の中で実施した対象地域の牡蠣商品の食味試験によるプロファイリングとブランド化の方針策定について報告します。
2. 養殖ビジネスマッチングプラットフォーム構築事業
本委託事業は、5つの実施項目を有しており、これらの項目をCAINES会員企業・団体が業務分担を請けて実施しました。本事業のスキームを図1に模式的に示します。本事業の目的は、大阪府内における「養殖ビジネス拡大を図るプラットフォームの構築を行うこと」となっています(業務委託仕様書より抜粋)。対象となる養殖業とは、陸上養殖を含む大阪府内で実施される養殖業全般となりますが、対象として、特に陸上養殖と大阪府南部地域で最近開業した牡蠣養殖を中心に実施して欲しいと大阪府からの意向を受け、実施内容を検討しました。次項からは、5つの実施項目ごとに実施内容を紹介します。
2.1 養殖事業者向けの研修会の実施
令和7年9月17日に、牡蠣養殖業者及び漁業協同組合(以下、「漁協」とする。)職員向けの牡蠣養殖勉強会を開催しました(図2)。企画調整は広島県立総合技術研究所(以下、「広島総研」)が担当しました。参加者35名(うち、牡蠣養殖業者および漁協職員18名、漁連3名)が参加し、CAINESの紹介、養殖ビジネスマッチングプラットフォーム構築事業の紹介、牡蠣の多様性とプロファイリング技術の紹介、国内の牡蠣市場の動向について(クニヒロ株式会社)など、牡蠣養殖とビジネスに直結する内容をご紹介しました。また、この時点で大阪府内の牡蠣養殖業者のうち6漁協所属の業者と顔を合わせることができたので、シーフードショー大阪(後述)への出展意向や、養殖業者ヒアリング(後述)の事前アンケートを実施し、業者さんたちとの対話を通じて、情報収集や意見交換を行いました。
2.2 養殖業者向けのシンポジウムの実施
令和7年12月3日に、大阪公立大学中百舌鳥キャンパスのイノベーションアカデミーにて、シンポジウムを開催しました(図3)。このシンポジウムは、大阪府内にて養殖業を営む方と、これから養殖業を実施する可能性がある方を対象として開催し、CAINESセミナー(第27回)との共同開催としました。講演者には、スジアオノリの陸上養殖を事業化されている三島食品株式会社、完全閉鎖循環式陸上養殖事業を展開するNTT東日本株式会社、回転寿司チェーンを展開するくら寿司株式会社の100%子会社として養殖業に取り組むKURAおさかなファーム株式会社の三者をお呼びし、最先端の成功事例の紹介をしていただきました。CAINESセミナーと同時開催することで、大阪の養殖事業者とCAINES会員との交流の場を提供することができました。ここから新たなコラボレーションや開発案件が発生することを期待しています。
2.3 第23回シーフードショー大阪への出展
令和8年2月25・26日開催の第23回シーフードショー大阪において、「大阪府水産課」のブースを出展し(図4)、参加する養殖事業者の産品のPRや商談の場を創出しました。この事業は日本海工株式会社を中心に対応しました。出展者は大阪府内の牡蠣養殖業者4団体と大阪府漁連で、それぞれ商品を陳列し、試食提供も行いました。当日は出展ブースに近畿地域を中心に多く来客があり、商談に発展するケースも複数ありました。出展後の出展業者向けアンケートでは、出展者の多くが出展について「満足」と回答したほか、2日間に行った名刺交換数が50件近くあるなど、「次」につながる取組となりました。このとき、大阪産(おおさかもん)の牡蠣を知ってもらうために、①生産地が全て「泉州」にあたるため「泉州牡蠣」という名称を使用し、②同じ「泉州」で生産された牡蠣でも銘柄によって多種多様な特徴があることをPRするために、銘柄ごとの特徴を数値化して表示する「牡蠣プロファイリング」を実施しました。これらについては、後ほど詳しく紹介します。
2.4 府内養殖事業者へのヒアリング
2.5 報告書の作成
本受託業務の内容は株式会社東京久栄によってとりまとめられました。無事、委託期間終了前に報告書を大阪府に提出し、今年度の委託事業を終了することができました。
3. 泉州牡蠣を対象とした牡蠣プロファイリングの試行
2.4で説明したシーフードショー大阪への出展に向けて、②の泉州牡蠣の銘柄による多様性をPRするために、各銘柄の牡蠣を対象とした食味試験を行い(図5)、この結果を元に、銘柄の特徴を数値化する活動を行いました。食味試験会は令和7年12月と、令和8年2月に開催し、CAINESメンバーと大阪府の水産技術センター職員の方々に食味評価をしていただきました。この結果を元に、各銘柄の試食時点での評価結果を算出し、銘柄の特徴を表す10段階の評価結果を掲示しました。 展示会に訪れた商社、小売店、飲食店などのバイヤーからは、商品評価の表示に対して概ね肯定的な感想が聞けました。一方で、牡蠣養殖事業者からは、数値が小さいと悪い印象があることや、2月初旬の食味試験時と評価の掲示を行ったシーフードショー当日(2月下旬)では、約3週間の間に商品特徴が既に大きく変化しており、出品中のものと評価内容に隔たりがあるなどの問題点も指摘されました。将来的には食味試験をせず、身と外観の画像から商品評価値を推定することを目標にしていますが、今回収集したバイヤー側と養殖事業者側の感想から、①バイヤーは商品情報を表すコンテンツを求めていること、②リアルタイムの評価が重要であること、③10段階評価を行うと、(実際はそういう意図で設計していないにも関わらず)1や2などの小さい数値が9や10などより劣っているという評価に見えてしまうこと、④現在使用している6項目の主観評価の形式ではなく、成分やサイズに関する情報を数値で示す方が単純で分かりやすい可能性があることなどの気づきが得られました。